執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~


「恋人同士だったのに、雅文は会社の御曹司だってことを隠していたの。付き合っているときに何度か実家の話になったけど、雅文はそのたびに嘘をついて誤魔化した。それは私が遊びの相手だったから。騙されて愛されてると信じ切っている私のことを、雅文は裏で笑っていたんだって」
「まぁ、たしかに女の子を騙してゲームを攻略する感覚で付き合って、武勇伝みたいに自慢する男はいますけどね」
「まどか。そのことをちゃんと元カレに聞いたの? どうして嘘をついていたのかとか、本当に遊びだったのかとか」

 なるほどとうなずく瞬くん横で、まったく納得いかない表情で眉をひそめる朋美。私は苦笑いしながら首を横に振った。

「聞けるわけないよ。雅文は私に嘘をついて騙してた。それだけで十分。わざわざ傷つくことを聞きたくなかったから、彼に捨てられる前に自分から別れを切り出したの。雅文はアメリカ赴任することになって、私たちの関係を終わらせるのにはちょうど良かったし」
「どうして自分から別れを切り出しちゃうのよ。好きなら信じればいいのに!」

 まっすぐな朋美らしい意見に、私はうつむいた。

 だって、信じていても裏切られたら? 自分は必要のない存在だって。愛してなんていないって。そう突き放されたらどうすればいいの?

 心を許した相手に捨てられる恐怖を、もう二度と味わいたくない。それなら強がって自分から手放した方がずっといい。

 そう思ってしまうのは、たぶん実の父の影響だ。父は母と私そして生まれたばかりの弟たちを捨てて出ていった。私が小学生のときだった。

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