執着求愛~一途な御曹司の滴る独占欲~
『お父さん、行かないで』そう言って泣いてすがった私を見下ろして、父はめんどくさそうにため息をついた。
円満で幸せな家庭だと思い込んでいたけれど、父には愛人がいたのだとあとから聞かされた。ずっと騙されていたんだと知ったときの絶望感を、今でもはっきりと覚えている。
「まどかさんはせっかく美人さんなのに、不器用だなぁ」
私たちのやりとりを見ていた瞬くんは、あきれたようにため息をついた。
「不器用なんじゃなくて、利口なの。わざわざ無駄に傷つかないように自衛しているだけ。そんなわけで、雅文が嫉妬したなんてありえないから」
気持ちを切り替えてはっきりと言うと、瞬くんは「いや、嫉妬したのは間違いないかも」とつぶやいた。
「でしょう?」
「まさか!」
瞬くんの言葉に朋美と私が同時に反応して声が重なった。私たちふたりの視線を受け止めながら、瞬くんはあごに指を添えた探偵みたいなポーズで話し出す。