real feel
「仕事の話だと言うから、こうして宮本課長や蘭さんにも来てもらったんです。プライベートなことに関してはお答えし兼ねます」

「そう、ですか。本当なら引き継ぎの時に蘭さんからいろいろ聞けると思っていたんですが、ほとんど話もできなかったじゃないですか!蘭さんは広報での引き継ぎに忙しくて、こっちの引き継ぎは蔑ろじゃなかったですか」

「そっ、それは……」

確かに高柳さんの言う通りかもしれない。
私も高柳さんに自分の受け持ってる分を引き継ぐものと思っていたけど、その必要はないと言われたのだ。
だから私の引き継ぎといえば、新しい配属先の広報部販促課での引き継ぎがメインになっていた。

「引き継ぎに関しては、俺から言っておこうか」

宮本課長がやっとここで口を開いた。

「普通だったら蘭さんから高柳さんに引き継がれるものだけど、今回の場合はちょっと特殊だからな。蘭さんと高柳さんじゃ立場が違うんでね」

「立場が違うって、どういうことですか?」

私も気になった。
入れ代わりで異動になったのだから、立場は同じような気がするけど。

「はっきり言わせてもらいます。高柳さん、貴女に蘭さんの仕事を引き継ぐことは無理ですよ。蘭さんが私のパートナーとしてやって来たことを、そのまま貴女にさせるつもりはありませんから。だから引き継ぎなんて最初から必要なかったんです」

あ……。
そういう意味だったんだ、必要ないって。

「どうして……。私では力不足だということですか。まだ引き継いでもいないのに。そんな風にいわれるなんて」

高柳さんは、目の前の私を睨み付けた。
プライドを傷つけられた……その目はそう言っているようだった。

「高柳さんだからじゃない、他の誰でも出来ないんです。だから貴女には蘭さんとは違う仕事をしてもらいたいのです。もう既に引き継ぎ終わってますよね。だから高柳さんがこれから業務に就くにあたって何も差し支えることはないはずです」

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