real feel
俺が結婚したいと思った女、それは"蘭まひろ"ただ1人。
彼女にとって俺は初めての男ってことになるが、俺にとって彼女は……最後の女。
いや、自分から欲しいと思った女はまひろが初めてだ。

俺にはお前が最初で最後。

隣で気持ち良さそうに眠るまひろを見つめる。
この温もりを知ってしまったら、手離したくなくなってしまう。
ずっとそばに置いておきたい。
俺をひとりにしないでくれ。
……柄でもないからそんなこと直接言えないけど。

仕事ができるのにも驚いたけど、あの見た目から家庭的なイメージはなかったから、まひろの本質を知ったときの衝撃は忘れられない。
俺の理想をそのまま描いたような女だったからな。

まひろの家庭事情も複雑といえば複雑だ。
そのせいで、素顔を他人に見せないように化粧という名の仮面をつけて一人前に認められるように努力を重ねてきたんだろうと思う。
シャイニングに高卒で入社し、ひとり孤独に耐えながら戦ってきたのかと考えると、いじらしくもあるが彼女の芯の強さを思い知る。
だけどまひろ、お前はもうひとりじゃないんだ。

艶やかな髪をそっと撫で、その甘く柔らかい唇に引き寄せられるように、口付ける。
お前が望むなら、何度でもキスしてやる。
望まれなくても、俺がしたくてたまらないっていうのが本音だけど。

ファーストキスを奪ったあの時だって、衝動的ではあったが、欲情を抑えきれなかったんだ。
欲しくてたまらなかった。
そのくせ2ヵ月もの間、忘れていたのは俺の失態。
戒めとして2度と忘れることのないよう、胸に刻みつけ、まひろにキスをする度に思い出しているのだ。


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