real feel
教事1課に移動になってから、まひろとの出会いが俺に変化をもたらした。
いきなりコンビを組まされた時は『冗談だろ』とハナから当てになんかしてなかったし、1週間我慢したらさっさとお払い箱にしてやろうと思ってた。

それがまさか、この俺にとって必要不可欠な無二の存在となるなんて。
誰が想像出来たのだろうか。

仕事だけじゃない。
付き合うようになったきっかけは、イチにぃから『付き合ったらどうだ』と言われたからだったけど。
その時点で俺はもうとっくにまひろに堕ちていたんだから、必然的というか運命だったのかも、と今なら思える。

俺は昔から結婚願望は強かった方だと思う。
自分の家庭環境のせいかもしれない。
母親と幼いころから離ればなれ、血の繋がりがない吉田の父とずっと2人で暮らしてきた。

別に嫌だったわけじゃないし、父さんには感謝している。
血の繋がりなんて関係ない。
俺の父さんはあくまでも吉田真……ただ1人しかいない。

俺の実の父、佐伯の父はもう亡くなっている。
俺が父さんの『吉田』姓ではなく『佐伯』姓なのは、佐伯の父の意向だったと聞かされている。
一緒に暮らしている父さんと名字が違う。
それこそおかしな話だと思うが、俺にはどうしようもない事だ。

そんな複雑な家庭環境だからこそ、自分が結婚したらごく普通の家庭を持ちたいという願望があるんだろう。
父親と母親と子どもが一緒に暮らす、平凡で幸せな家庭が俺の望みだ。

だが残念なことに俺が結婚したいと思える女になかなか出逢う事はなかった。
いくら結婚したいと言っても、誰でもいいという訳ではない。
当たり前だけど。

結婚に思い入れがあるため、相手の女に関しては理想が高かったのかも知れない。
女と付き合うのと、結婚を考えるかどうかは、別問題だと思っていた。
何人の女と付き合っても結婚しようと思わなかったのは、付き合った女と結婚が結びつかなかっただけだ。
自分から好きだと思える女でないと、結婚なんて考えられないからな。

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