real feel
「違う。シャイニングに入社して、営業から広報そして今の部署である教事1課に異動を繰り返してきたけど、やっと仕事の面白さが分かってきたところなんだ。上司にも恵まれているし。欲を言えば有能なパートナーが欲しいトコだけど、今は不在なんだ。いつか取り戻してみせるけど」

え、あ、はい?
なんかちょいちょい気になるワードが出てきたようだけど。

「そっか、兄さんが羨ましいな。俺も頼れる上司が欲しいよ。兄さんみたいなさ」


ピンポーン♪

「あ、龍崎さんじゃないですか?私が……」

「いいよ俺が出るから」

玄関に向かおうと腰を上げた私を制して、主任が席を立った。
主任が部屋を出るのを待ったようにして、お母さんが私に向かって言った。

「蘭さん、申し訳ないけど翔真とあなたの婚約は認める訳にいかないの。実は翔真にはいい縁談がありまして」

え、縁談?
ちょっと待ってそんなの聞いてない!と思わず口を開こうとした私よりも先に、祥平さんが慌てたように声を上げた。

「かっ母さん!そのことなんだけど、サチと翔真兄さんの結婚については……白紙に戻してくれないか?」

サチ……サッチン?
なんてつい考えてしまったところで、主任が龍崎さんを伴って部屋に戻ってきた。

ついさっきのお母さんの発言が頭でリフレインし、不安げに主任を見てしまった。
主任の縁談話って……。
祥平さんは白紙に戻してほしいとか言い出すし、一体どういうことなのか話が見えない。

「到着が遅れて申し訳ありません。……みんな硬い表情だね」

龍崎さんにもこの微妙な空気が伝わっているみたい。

「祥平、どういうことなの?白紙に戻せとは。どうして祥平が」

意味が分からないとでも言いたそうなお母さん。
私もだろうけど。
一方、思い詰めた様子の祥平さん。

「母さん、実は俺が……サチと付き合っているんだ!だからサチは翔真兄さんとは結婚できない」

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