real feel
う………………嘘ぉ。
だってだってこんな、こんなことって………。

「プ、プロポーズは、してくれないのかと思ってた……。このままなんとなく時が流れて行って、そのうち結婚するんだろうなって、思ってた」

「オイちょっと待て。俺がそんないい加減な男だとでも思ってたのか?心外だな」

「だって!プロポーズもされていないのに、婚約とか決まっちゃって。なんだか実感が乏しくて……」

「俺の中ではまひろと結婚するってことは当然であり必然だった。だから早く周りの人達に認めさせたくてたまらなかった。それで一番肝心なことを後回しにしてしまったのかもな。だけど俺だって男らしくビシッと決めるつもりだったんだ」

そんな風に思ってくれていたんだ。
今日の翔真はちょっと変だと思っていたけど、覚悟決めてくれてたからだよね。

「じゃ早速だけど聞かせてもらおうか。返事は『YES』か『はい』で、5…」

「はい」

もう答えはとっくに決まっていたんだから。
返事をするのに5秒も要らない。

「私を……『佐伯まひろ』にしてください!」

感極まって思わず翔真に抱きついた。
ひざまずいていた翔真はよろけそうになりながらも私を受け止める。
そして立ちあがってから体勢を立て直し、しっかりと抱き締めてくれた。

「ああ、してやるよ。幸せにしてやる……」

「うん……。私も翔真を幸せにしてあげる」

私を抱き締める翔真の腕が『まだ足りない』とでも言うように私の身体に絡みついた。
周りに人がいないかどうかちょっとだけ気になったけど、いまはまだ翔真から離れたくなかった。

資料室であれだけたくさんの社員(野次馬)に目撃されたんだもの。
誰かに見られたって構わない。

さすがに息が詰まりそうになってきた私を解放するように、腕の拘束を解いた翔真が私に言った。

「まひろ、もう一回目を閉じて」

狂おしいほどに力強く抱き締められて、ドキドキのボルテージは最高潮に達している。

今度こそ、今度こそ……。
期待に頬を赤く染めながら、うっとりと目を閉じた。

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