real feel
「自業自得よね、真行さんとの関係も妊娠も、全部私が仕組んだことなんだから。だから流産した時にもう終わったと思った。自暴自棄になった私は計画の全てを打ち明けて、また1人に戻ろうと…。だけど、真行さんは私の元を去らなかった」

麗花さんの妊娠は、仕組まれたことだった。
父が麗花さんと浮気したんじゃなかったの?

「真行さんは、私を追い詰めたのは自分だと言って私を責めたりしなかった。だけど、やっぱり彼は自分の家族を捨てることもできないと悩んでいたの。だから、こうしようって条件を出して私と再婚したのよ」

「条件って……?」

「10年間の契約婚だったのよ、私と真行さん。10年の結婚生活でお互いに気持ちが寄り添い合えば、婚姻関係を継続。そうならなければ離婚。そういう約束の上での結婚だった」

全く知らされていなかった事実に、ただただ驚くばかりで、言葉が出てこなかった。
もしこの事実を知っていたのなら、私は今ほど父を恨んだりしなかっただろうか。

そんなこと、分かるわけない。
大事なのは真実を知った今、私がどう考えるかなんだと思う。

「だから、私たちはもう離婚してるの。一応契約だったから10年経ってからの離婚だったけど、結論はとっくに出ていたわ。だって私の方から真行さんに別れを告げたんだもの。あの人は優しかったけど、その優しさが私にはだんだん苦痛になっていった。……私どうしても貴女と話がしたかったの。だからこれでもう思い残すことはない……」

私が長年憎しみを抱いてきた彼女は、私が想像していた姿とは程遠かった。
もっと自信に満ちていて、高慢で、人生の勝利者であるかのような尊大なイメージだったのに。

実際は、空気のように透明で存在感が薄くて、自信の欠片も感じられないような、弱くちっぽけなイメージだ。

「まさか今日こうして麗花さんと真っ正面で向き合うことになるとは、予想もしてませんでした。父と離婚して、今は邦都に居るんですか?」


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