real feel
「佐伯主任は言ってました。高柳さんにはお付き合いしている男性がいると。それなのに、どうして主任に関わろうとするんですか?もう関係ないん……」

「私だって!!まさか追い出されるなんて思ってなかったわよ!!」

私の話を遮るように、急に声を荒げて高柳さんは私を睨み付けた。

「拓実さんは、奥さんと別れるつもりなんてないのよ。でもそうだとしても、私はあの人の側にいられればよかったのに。拓実さんは、私だけを愛してくれていると信じていたから……」

『拓実さん』って高柳さんの彼氏らしいけど……奥さんって!?
不倫してるの?高柳さん。

「あ、あの、高柳さん。差し出がましいようですが、不倫はよくないと……」

「あんた、見かけによらずお人好しなの?私の心配してる場合じゃないでしょ。ていうか、私だって好きで不倫してるわけじゃないわよ……」

ここで何故か、高柳さんの恋愛について聞かされる羽目になった。

「私はね、拓実さんが結婚する前から付き合っているんだから。彼が本当に愛してるのは奥さんじゃなくて私。彼は、仕方なく結婚したんだから……。だから私とずっと別れられなかったのよ」

「結婚する前からって、そんなに長いんですか。でもそれじゃいつ佐伯主任と……」

単純な疑問だった。
そんなに長いこと『拓実さん』という彼氏がいるのなら、主任の出る幕はなさそうだけど。
出来ることなら、ないほうが私にとってはいいんだけど。

「簡単なことよ。私と拓実さんは切れたことがない。付き合い始めてからずっとね。入社してすぐに私は拓実さんに奪われたから……。あ、その時はまだ翔は入社前よ。私は翔より1学年下だけど短大卒だから会社では1年先輩なの。私が翔と付き合ったのは、翔が入社して1年後くらいからよ。それも翔が広報に異動したと同時に終わりを告げたけどね」

「えっ、その彼氏さんって、うちの会社の人なんですか?」

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