First Snow
だから輝は私と話したいと言った。
でも私は彼の言葉に耳を貸そうとしなかった。
フラれたあの日を思い出すのが苦しかったから逃げていた。
もう一度…輝と話さなきゃ。
そう思った時には立ち上がっていて自然とコートを羽織っていた。
「……ごめん、ちょっと出てくる」
「ハイ。これ持ってってあげて!」
はい、と手渡されたのは男性物のコート…あ、輝が来ていたコートだ。
頬の涙を拭って美桜と翔太郎くんに小さく「教えてくれてありがとう…」とお礼を行って私は店のドアの方へと駆け出した。
「さむっ……」
時刻は11時を回っていて、外は寒さが一層増していた。
羽織った上着なんてパーティードレスの上からじゃあんまり意味がないくらい冷たい空気が肌に触れるたびブルリと震える体。
ビルの入り口を抜けてキョロキョロと外を見渡すと、花壇の縁に腰かけてスマートフォンを弄りながら街行く人々と時々目で追う輝の姿があった。
「輝」
「……じゅん?」
私が声をかけると、びっくりしたように顔をあげてすくっと立ち上がった。
「……酔い冷ますにしては長かったね」
「う、うん……」
さっきまであんなに関わりたくないみたいな態度を取っていた私が急にやってきて話しかけるから向こうも驚きを隠せない様子。
はい、と上着のコートを渡すと再び目を見開いて「あり、がと…」とぎこちない返事をして袖を通した。