【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。
帰り道の今宵は未だ混乱のさなかにいるようで。


「駆くん……、あのごめんね。どうしていいかわからなくなっちゃって……だから」


甘んじて、膝を貸したと?


貸すな、バカ。


「だけど……なにも全部さぼらなくても……。膝枕くらいで」


「膝枕くらい?」


横断歩道。信号が赤になって立ち止まった。


「へぇ。今宵にとって、あれって”たかが膝枕くらい”なんだ?」


人差し指で顎をもちあげ目を合わせると、恥ずかしそうに視線をずらす。


「……っ、たかがなんて言ってない……」



なにその必死な顔。もっと見せて。

俺でいっぱいの、その顔。


信号が変わったから、今宵を離して再び歩き始める。


「……はぁ」と安堵のため息をついてるとこ悪いけどね。


あんまり気抜いてないほうがいいよ?


俺、いま。

今宵のこと、欲しくてたまんないから。

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