【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。
彼女の好きなもの
SIDE 駆
***
今宵から借りた本を数日かけて読んでいるんだけど。
……なっがぁー……。
「駆が読書とか、頭、どうかしたん?」
自分の頭を指差す理生が邪魔に入った。
「うるせ。本くらい読むんだよ」
「なになにぃー! 駆くん、何読んでんの?」
通りすがりの女子が本の表紙を確認すると「面白そうー!」って思ってもなさそうなこと言うよな。
「あー疲れた。今宵に癒してもらお」
席を立って、「はい返してね」って女子の手から本を抜き取る。
一日何回思ってんだろうなぁ。
今宵に会いたいって。
「ちぇー」なんて女子の声が聞こえてきたあと、理生が追いかけてきた。
「俺も授業疲れたし、今宵ちゃんちょっと分けてよ」
「はぁ? ついてくんな馬鹿が」
「こっわ!」
だいたいどうやって分けんだよ。ケーキかよ。
理生の横をすりぬけて教室を出た。
1年2組、今宵のクラスは空っぽ。
「えー……」
なえる。
片手に持った文庫本をなんとなく開きかけたときだった。