【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。
「涼元くん」


その声に振り返ったら、さらに気分が萎えた。


そこにいたのが、俺の今宵の膝を枕にしやがった男、音羽結太郎だったから。



「なんだよ?」


「その本ってもしかして衣川さんから借りたの?」


「は? なんで?」


「だってその本、中学の時、俺が彼女に勧めた本だから」


……ん?

『俺が彼女に勧めた』と頭の中でもう一度繰り返す。


「え? じゃあお前が図書館の……」


そこまで言って言葉を止めた。


音羽の目は丸くなり、次第に細まっていく。


「……なんだ、衣川さん、覚えていてくれたんだ」


心底嬉しそうにつぶやく音羽。

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