【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。
「どうしました!?」
黒板を向いていた先生が目を見開きながらこっちを見ているし、それどころかみんなこっちを見てるけど、
あたしは座っている駆くんを盾にするかのように立って、震える指先で床をさした。
「いやぁっ!! こっちにくる!」
「ぎゃああああ!!」
そばの生徒もソレに気づいて悲鳴を上げ始めた。
最初こそ不思議そうに見ていた駆くんは「あー、あれか」と床に目を向けている。
生徒は次々にソレに気づくと飛び上がって教卓側へと逃げていく。
先生だって逃げてる……!
あたしは見たくもないけど知らぬ間にこっちに来たら困るから、床から目を背けることはできない。
地面を移動するあの赤と黄色のおもちゃのような光沢のある……虫。
ぞわっとして、力が抜けて……インパクトの強すぎるソレは目に焼き付いてしまっている。
なにあれ……初めて見た。
あ……気が遠くなりそう……。
震える手で駆くんの腕を掴んでいると。
「今宵、あっち行ってろよ」
あたしを押しやると、駆くんはのんびり立ち上がった。
その間もソレは移動しているから教室中が大パニックでそこらじゅうで悲鳴が上がっている。