【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。
音羽くんの静かで低い声は、駆くんのいたずらっぽいのとは全然違う。真剣。
親切でやってくれてるんだから、
赤くなったら絶対だめなのに……!
……だけど、近すぎるから……。
「……なんで顔隠すの?」
音羽くんって、マイペース……。
「……は、恥ずかしいから」
「恥ずかしいの?へぇ……」
首元をテープ越しの指先が優しく這う。
「……これでよし」と言って気だるそうに首をかしげる彼は続けた。
「衣川さん。こういうのは気をつけた方がいいよ。女の子なんだから」
顔を覆っていた手を剥がされて、目の前の音羽くんを見上げると。
ふっと優しく笑っている。
どきっとした。さっきまでずっと無表情だったから……。
そのとき。
後ろからハァーっとため息が聞こえた。
「……はい、今宵。おしまい」
その声にしっかりと心臓が反応する。
「……駆くん」
「なに俺以外の男に頬染めてんだよ?」
冷ややかな目とは対照的に、にやりと歪むのは赤い唇。