【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。
授業があと2分で始まる。


体育館に行くことを選べば、人生はじめてのサボり。


きっと先生にも怒られる。


行かなかったら……。駆くんに。


思わず首筋に触れる。


あぁ、もう!どうしよう……。


「行きたいなら行けばいいじゃん?自分に正直に」

「ルイちゃん……」


にかっと笑うルイちゃんは……


「じゃあ一緒に」

「私は一緒にいけないよ!だって次、日本史じゃん?」


ルイちゃんは日本史の先生の”ダンディなおじ様”と言われるような雰囲気に惚れこんでる。


「先生の今日のファッションも気になるしね。知ってる?スーツに合わせていちいち靴替えてるんだよ?」


「そ、そうなんだ……」


「それにあの声!あれはねーーー」云々。


――キーンコーンカーンコーン。


あ……うっかりしてた!ルイちゃんの話を聞いてたらチャイム鳴っちゃった……!


日本史の先生が教材を抱えて教室に入ってきた。


確かに今日もお洒落だし、俳優の阿部なんとかさんによく似た雰囲気で、かっこいいおじさんだと思うけど。


ってそうじゃなくて……。


言うなら早く先生に言わなきゃ。


そう、もうほとんどサボる気になってる。


あたしは、結局駆くんに会いたいって思ってしまっているんだ。


そのときツンツンとセーターが引っ張られた。

セーターの二の腕らへんをつまんでいたのは、お隣の音羽くん。


「衣川さん、もしかして具合悪い?」


首を傾げる音羽くんに、あたしは「うん」と答えてしまった。


すると
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