【完】STRAY CAT
とっくに自覚はしていたものの、一度も好きとは言わなかった。
そう言うことで優等生の鞠を、問題児の俺に縛ってしまうのが嫌だったからだ。
それでも通じ合っている想いは確かなもの。
校舎の中で人知れずくちびるを重ね合う時間はひどく背徳的で、ひそやかに滴る吐息はいつだって甘く熱を帯びていた。
「ねえ……付き合ってくれないの?」
冬休みは冬期講習という名目で鞠が学校に来ていたが、年末年始は完全閉鎖の日がある。
その後は講習がなかったのと新学期の2日間は午前帰宅で昼休みがなかったため、年が明けて顔をあわせるのはその日がはじめてだった。
「……付き合う気はねーよ」
鞠を想っての、言葉だった。
……優等生の鞠と俺じゃ、釣り合わない。
俺に鞠はもったいなさすぎる。
だから、想い合っているという事実があれば、俺は別に、恋人という関係を結ぶ必要はないと思っていた。
「……どうしてもだめ?」
「ああ。付き合う気はねーし。
……それを望んでるなら、もう会いにこなくてもいい」
最後のは、完全に俺の強がりだけど。
でもそこにこだわる必要はないだろ、って。
そう思ってたのが俺だけだったって知ったのは、本当にその翌日、鞠が会いに来なくなってからだった。
男と女じゃ、こういうのって価値観が違うらしい。……いや、人によるのかもしんねーけど。
「……はあ」
おかげで眠れなかったのは言うまでもない。
さすがに「来なくていい」は言い過ぎだったかと後悔したところで、鞠はスマホを持っていないから連絡もしてやれない。
それでも時は、俺らそのものや感情を置き去りにして、あっけなく進んでいく。
朝は間違いなく夜になるし、夜は間違いなく朝になる。