COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

あれから随分と時が流れた。

僕は変わった。

髪の毛を少しだけ染めてみたり、あんなにも怖かったコンタクトレンズにも挑戦した。
毎月発売されるメンズ向けのファッション雑誌を購入しては、穴を開くほど見返した。

けれど、僕を王子様だと比喩する人もいるほどの変身を遂げた僕にも、彼女は見向きもしなかった。

遠くから彼女を見つめていても、何も変わらないなら行動するしかない。

そう決心したあの日。


わかっていた。

彼女が僕のことを何とも思っていないこと。
他に好きな人がいるということ。

彼女が自覚するよりも先に僕は気付いていた。
それほど僕は、ずっと彼女だけを見てきたから。


いつか彼女がこちらを振り向いてくれる日が来るかもしれない。

そんな淡い期待を抱いて、弱みに付け込んだ。
卑怯な真似をしてでも、彼女を僕のものにしたかった。
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