COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

リリリン。

終業のベルが鳴り、皆揃って帰り支度を始める。
ぽつりぽつりと会話はあれど、理央は相変わらずの様子だった。

『…さ、行こっか』

やはりムードメーカーの彼女がここまで静かだと、どうしても士気(しき)が下がってしまうのか
昭香先輩の毎日の号令も今日は心なしか覇気がない。

オフィスの扉を開ける理央の背中に続くと、彼女の背中の向こうに人影が見えた。
その人影は壁にもたれかかるようにして、こちらを見ている。

『有松さん…』

前にいる彼女がぽつりと呟くようにその名前を呼んだ。

『日比野…。

その、一緒に帰らないか』

『……今日は無理です、すみません』

前にも確かこんなことがあった。
けれどその時とは打って変わって落ち着き払った彼女の口調に違和感を感じる。
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