COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―

『…じゃあ、少し話せないか』

そう言う有松さんの表情がいつもより少し険しい。

やっぱり。この二人、何かあったんだ。
それを私が察するのと同時に、理央が声を荒げた。

『だから無理ですってば!!』

そう言うと、彼女はエレベーターホールの方向へ向かって駆け出した。

有松さんがそれを追おうとした瞬間、
昭香先輩の良く通る声が突き刺すようにそれを制した。

『勇太。

あんた理央に何したの』

『……わからない』

それは単なる疑問ではない。
その声には明らかに怒りが込められているように感じた。

けれど彼の様子から見るに、本当に心当たりがないようだ。

『…うーん、そっか』

昭香先輩は息を吐き出すように言うと、有松さんに歩み寄る。

『あの子今日一日様子がおかしくって、今は誰が話しても無理だろうから。

今回は私に任せてよ』

有松さんは相変わらずの気難しい顔のまま、目を伏せて静かに頷いた。
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