COFFEE & LOVE―秘書課の恋愛事情―
けれど、
前を向き直った彼女は“あの顔”をしていた。
幾度となく見てきたその表情。
その瞬間、反射的に立ち上がると、出口へ駆け出した。
“『けど…、
忘れられない人がいる』”
頭の中で彼女のその言葉が反響すると、先程まであんなに高鳴っていた心臓は打って変って握り潰されるように痛む。
誰が、そんな顔させてるんだよ。
誰が…、
その答えはわかっている。
目の前の扉を勢いよく開けると、すぐ先に彼女が立っていた。
彼女は驚いた顔で、こちらを見つめている。
「本郷さん!おかえりなさい!」
今にも溢れ出しそうなくらいに心の中に充満している感情を抑え込みながら精一杯に笑顔を作ると、彼女はそれに応えるように微笑んだ。