素直になれない夏の終わり
「レモンかけるともっと美味しいよ」
頼んでもいないのに、そう言って津田が隣から夏歩の取り皿に向かってレモンを絞る。
また一つ摘まんだら、先ほどよりさっぱりとして美味しかった。せっかくなので、もう一つ摘まんでおく。
「ねえ、なっちゃん。そろそろそれ、薄いんじゃない?」
津田が“それ”と指差したのは、ようやく三分の二まで飲んだレモンサワー。
「何か別の頼もうよ。何がいい?」
「いいよ。まだ入ってるし」
「レモンサワー風味の水がね」
言いながらテーブルの端に腕を伸ばした津田は、手に取ったドリンクメニューを夏歩の前に差し出す。
いらないとは言ったものの、せっかくなのでメニューを眺めた夏歩は、チラッと向かい側にある美織のグラスを見る。
その僅かな視線の動きを見逃さなかった津田は、「美織が頼んだのはこれだね」とモスコミュールの文字を指差した。