素直になれない夏の終わり

「これにする?」


聞きながら、既に店員を呼ぼうとしている津田に、夏歩は慌てて待ったをかける。


「……モスコミュールって、ウォッカとライムとジンジャーエールを合わせたお酒だって書いてある」


メニューのモスコミュールの文字の下に、小さく書かれたそれを夏歩は読み上げる。


「うん、そうだね。それがどうかした?」

「……ウォッカって、強いお酒でしょ?」


夏歩はそれほど酒が強い方ではない。どちらかと言うと、弱い部類に入ると言ってもいい。

津田が言うところの“レモンサワー風味の水”になるまで時間をかけてチビチビと飲むのも、あまり杯を重ねなくていいようにと考えての飲み方だ。
それ故に、強いお酒にはやや抵抗がある。


「でもほら、別にウォッカをロックでいくわけじゃないから」


それはそうだけれど、ジンジャーエールで割ってはいるけれど、それでも元が強い酒であることが夏歩には不安なのだ。


「飲めなかったら俺が飲むよ。もしくは美織が。だから気になるなら頼んでみたら?」


今度は夏歩が待ったをかける暇もなく、津田は店員を呼んでしまう。
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