素直になれない夏の終わり
「……熱くないの?」
白菜の次は、柔らかそうな鶏団子。これもまた熱そうだ。
「もちろん熱いよ。でも、お鍋って熱いものでしょ?」
それはそうなのだけれど、この鍋は美味しくいただける熱さを超えているとしか思えない。
どう見たって、ふーふーしたくらいで食べられる量の湯気ではないのだ。
それなのに津田は、ふーふーしたくらいで今度は豆腐を食べている。
「なっちゃんって、猫舌だっけ?」
「……違うけど」
違うはずなのだけれど、津田を見ていると、もしかして自分は猫舌なのではと思えてくる。
このままずっと津田が食べる姿を眺めているわけにもいかないので、夏歩は覚悟を決めてふっくらとした白身の魚に箸を伸ばす。
念入りに息を吹きかけてから口に入れたのだが、入れた瞬間「あふっ!?」と口が開いた。
そんな夏歩を見て津田は、可笑しそうに笑う。
「やっぱりなっちゃんは、猫舌なんじゃないの?」
「違う!この魚が特別熱かったの」
「へー、そう。口に入れてから熱っ!?ってなって、わたわたしてるなっちゃんは凄く可愛かったよ」