素直になれない夏の終わり

「夏歩が筋金入りに素直じゃないことなんて、もうとっくにわかりきってるでしょ。何事も、続けることが大事なのよ」

「それは、まあ……そうだけど…………」

「詰んじゃったからもう夏歩のことはきっぱり諦めますって言うなら、別に止めないけど」

「それは無理。だってもうなっちゃんがいない生活なんて考えられないくらい好きだから」


それはあたしじゃなくて夏歩に言いなさい、と返して、美織はクスリと笑った。


「どうせ諦める気がないなら、とことん粘りなさいよ。夏歩、ねばねば系も嫌いじゃないわよ。納豆とかオクラとか」

「……何で食べ物?て言うか、なっちゃんってそもそも嫌いな食べ物とかあるの?」

「そう言えば聞いたことないわね。作る側としては、そっちの方が助かるんじゃない?」

「まあ、そうだけど。……いや、だから何でここで食べ物の話?」


何でかしらねーと適当に返しながら、美織はカフェモカを一口。それからまた口を開く。


「とりあえずあたしからは、“まあ頑張りなさい”とエールを送っといてあげるわ」

「……それは、どうも」


何だかよくわからないままにお礼を告げてから、津田が「出来れば――」と続けようとしたところで、夏歩が小さく唸りながら布団を跳ね飛ばす。

そんな夏歩に布団をかけなおしに行く美織に、“出来れば具体的なアドバイスが欲しい”と津田は言い損なった。



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