素直になれない夏の終わり

その日の夜、正確な時間はわからないけれど、外が真っ暗で車の走行音がしないことから判断するに結構な遅い時間、夏歩はふっと目が覚めた。

外だけではなく部屋の中も暗くて、横になったままざっと見渡した限り人の姿はない。


「……美織、帰ったのかな。声かけるって言ったのに」


喉はまだ痛いけれど、頭の痛みはだいぶマシになっている。だるさも残っているけれど、燃えるような体の熱さはかなり引いていたので、夏歩はゆっくりと体を起こしてみた。

頭が重たくてふらつくようなことがないのを確認して、夏歩は布団を脱いでベッドから足を下ろす。

その下ろした足が、そこにあった何か柔らかいものを思いっきり踏みつけた。

ういっ!?と夏歩が驚きの声を発したのと、「いぎっ!?」とそれが痛みに呻いたのはほとんど同時。

咄嗟に夏歩が足をベッドに戻すと、それはむっくりと起き上がった。


「ちょっ……な、なにしてるのよ!そんなところで」


喉の痛みで声が出しづらかったことが幸いして、夏歩は近所迷惑になるほどの大声を出さずに済んだ。
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