素直になれない夏の終わり
なんでここにいるのか、昨日はいなかったのに、連絡もなかったのに、今日だって朝起きた時にいなかったし、連絡もなかった、それなのになぜ今はここにいるのか――。
どうやって聞いたらいいかわからなくて、どんな順番で話し始めればいいかわからなくて、夏歩は何度も何度も言葉を詰まらせ、その度に頭を悩ませる。
そんな夏歩をしばらく見つめていた津田は、やがてゆっくりと口を開いた。
「……俺が、美織に任されたからって以外で、ここにいる理由はね」
聞こえた声に、あっちこっちと忙しなく動いていた視線を固定させたら、驚くほど真剣な顔がそこにあった。
時間が遅いから外から聞こえる物音は一切なくて、アパート全体もどこかひっそりとしていて、津田の声が部屋の中によく響くような気がした。
この世界に、二人だけ――そんなわけはないのだけれど、静かすぎるせいでそんな月並みな言葉が夏歩の頭をよぎったりして、だからだろうか、常にない津田の真剣な表情も相まって、妙にドキリとする。
「……いや、違うから」
「ん?」