素直になれない夏の終わり

夏歩の方が反応が面白いので主に夏歩に向けて、美織は勿体ぶるように一旦言葉を区切って、鞄から取り出したスマートフォンを操作する。

なに?誰?とじれったそうな夏歩に向かって、美織は画面に表示させた写真を見せた。


「え、嘘!?」

「へえー、やるね先生」


夏歩に向けられた画面に向かって、津田も体の向きを変える。

グッと二人の距離が近づいて、最早カップルの距離感になっているのだが、いつもはそこで激しく怒る夏歩も、今はそれどころではない。

美織が見せた写真には、はにかむように笑う元担任と、その隣で満面の笑みを浮かべ、カメラに向かってピースする女性の姿が映っている。しかもその女性の方が――


「じょ、女子トイレの壁に穴開けた人!」

「……どんな覚え方してるのよ。まあ、間違ってないけど。その時危うく退学くらいそうになってたクラスの問題児が、なんとまあ先生のお相手」


ビックリよね、と軽く言い放った美織に、津田も「ほんとだね」なんて同じようなテンションで返す。
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