素直になれない夏の終わり

「鍵を持ってるのがただの他人じゃなくて彼氏だったら、なんの問題もないでしょ。夏歩はこれからも津田にお世話してもらえる、津田は念願の夏歩の彼氏と言うポジションを手に入れる、これを解決と言わずしてなんて言うの?」

「津田くんに都合のいい展開」


ああ、なるほど。と美織は案外あっさりと頷いた。


「まあでも、それでもいいじゃない。あたし、夏歩の一人暮らしって結構心配だったのよね。生活能力低すぎだから。津田が面倒見てくれるなら、栄養失調で倒れるなんてこともないだろうし、足の踏み場がなくなるほど部屋の中が散らかることもない。あたしも安心」


そう言って美織は、スプーンで掬ったスープとマカロニを口に運ぶ。それを夏歩は、大変不満げな表情で見ていた。


「……前に美織、津田くんは一途だって言ったけど、私に言わせれば、諦めが悪くてしつこいうえに鬱陶しい」


まあ、そういう言い方も出来ないことはないわね。と美織。


「でも、そんなこと言ってたって、夏歩は津田が作った朝ご飯をしっかり食べて、持たされたお弁当も完食して、夕飯だってもちろん食べるんだものね」


その通り過ぎて、夏歩は何も言い返せなかった。それを見た美織が、クスリと笑う。
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