【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「……わしがいない間、ずいぶんと勝手を働いてくれたようだな」
「いえ……違います、おやっさん。俺は勝又組の再興を目指して……!」
「勝又組は、もう終わりだ」
男性が重々しい声で告げると、勝又さんが愕然とした表情になる。
「え……?」
「わしはな、こんな事務所すぐにでも畳んで、カタギになろうと思ってるんだ。……お前のような、哀れな人間をこれ以上生み出さないために」
哀れな人間……。彼をそう思っている人が、私以外にもいたんだ……。
勝又さんはそれきり黙り込んでしまい、悔しそうに唇をかみしめる。そして、男性に連れられて静かに事務所を去っていった。
た……助かっ、た……の……?
自分を取り巻く状況がうまく呑み込めず、未だ床に膝をついたままで呆然とする。そんな私の元に、尊さんが戻ってきた。
私は最愛の彼の姿を上から下までじっくり焼き付けるように見つめて、ようやく安心する。
よかった……私も彼も、生きている……。ちゃんと生きている……。
緊張の糸がふっと切れて目に涙をあふれさせた私に、尊さんも今まで抱えていたつらさを露わにしたかのように切なげな表情になる。そして目の前に跪くと、私の体をぐっと引き寄せて抱いた。