【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
母はホッとして思わず浮かんだ涙を拭いつつこう言って笑った。
「……まったくだわ。でも、すでに鞍馬さんにたっぷり叱られたでしょうから、お母さんは別のことを言うわね。……美織がそんな勇気ある行動をしたと知って、本当に驚いた。だけど、そんな娘のことを誇りに思うわ」
「お母さん……」
まさか、今回の無鉄砲な行動を褒められるとは思いもよらず、私は目を丸くする。すると、母の隣にいる父も頷きながら話す。
「その理由も、母から聞いたよ。美織は、銀行内の不正をただそうとしてくれたんだろう? お前がまっとうな子に育ってくれたこと、本当にうれしく思う。……血なんか関係ないと証明してくれたようで」
「……血?」
思いもよらぬワードが飛び出し、私はきょとんとして首を傾げる。すると、今まで静かにお茶を飲んでいた祖母が、湯呑みをテーブルに置いて口を開いた。
「美織。ちょっと長くなるが、聞いてくれるかい?」
「……う、うん」
それから祖母がゆっくり語りだしたのは、我が沖田家と、今回の騒動の原因である勝又組との意外過ぎる接点だった。