その少女は夢を見る
―沖田side―
『…その目、やめろよ。』
そう言った、サクラミヤチサメと名乗る少年は、今まで一度も出さなかったものを出した。
…所謂、“殺気”。
弱々しそうな彼から出たとは思えないその殺気に、その場にいる全員が警戒心を一気に高める。
何を考えているのか分からず、ずっとヘラヘラと笑っている彼。
そんな彼から一切の表情が消え、一言そう言って殺気を出したんだ。
…へぇ…間者だとしてもここまでの殺気は早々出せないんじゃないかなぁ。
そんなことを思いながら彼を見ていると、彼はまたへらっと笑った。
『そんな目で見られたら照れちゃうじゃないですかー、そんなに警戒されたって僕刀抜くことさえ出来ないんですけど。』
今の殺気のあとのこの言葉…信じることなんて出来るはずがない。
土方「…てめぇ、間者なのか。」
『いやあの、違いますし。』
土方「じゃあ…今の殺気はなんだ。」
僕達の言葉を代弁するように土方さんがそういう。
…すると彼は、意味が分からないとでも言いたげな表情できょとんとした。
『殺気…って、何の話です?』
原田「おいおい…それは無理あるぞ、坊主。」
左之さんがそういうものの、彼は本当に分からなさそうに少し首を傾げるだけ。
それでも表情は崩さず、笑顔を保ったままだ。
…違和感の無さ過ぎる、素敵な笑顔。
そんなところ。
でもこの状況でその笑顔は…不気味過ぎる。
『僕殺気も何も、今まで平和に生きてきたのでこの状況が有り得ないんですよねー。』
沖田「…?」
『かなり平和な時代から来たので。』
彼の言っていることは一々理解不能だ。
それでも…だからこそ…何処か面白くて、興味が出てくる。
僕はそんなことを考えながら、新しい玩具を見つけた気分で舌なめずりをした。