一途な執事と甘いティータイム
「で?そんな煌びやかなドレス姿でどこにいこうとしてんの」
その言葉ではっと気がついた。
このドレスを着たまま住宅街を歩くなんて目立つにも程がある。
即見つかって、送り返されるだけ。
かと言って無断で抜け出してきている私は、送迎してくれる運転手を呼ぶわけにも行かない。
計画の詰めが甘かった。
「えっ、ちょっと……!」
風にふわっとスカートが揺れたかと思えば、視界が回り綺麗な青空が見える。
「なに?今すぐアスファルトに落とされたいの?」
「い、いえ、とんでもございません。お願いですので下ろして……」
「無理」
有嶋にお姫様抱っこされるなんて……!
「どこに連れてくの!戻るのは絶対に嫌だからね!」
「うるさい。大人しく抱かれてろよ、お姫様」
──キュンっ
キュン?え、何この音。
謎な胸の音に戸惑っていると、そっと柔らかい椅子の上に降ろされた。
「すみません、お願いします」
有嶋がそういうと、車は走り出した。
ここはタクシーの中だった。