一途な執事と甘いティータイム
教室掃除の当番ではなかった私は、いつもより早く校門前にたどり着いた。
周りは部活に行く人やアルバイトへ行く人、家に帰る人がたくさんいる。
その中に、まだ有嶋の姿は見当たらなかった。
暇だなぁ、なんて思いながら足元の石ころを蹴飛ばしていると、ふと上から聞き慣れた声が降ってきた。
「あっ、今日は逃げなかったんですね」
「いつも逃げてるみたいに言わないで」
「屋敷から逃げたり、パーティー抜け出したり、昨日も約束守らず家に帰った人が言う言葉ですか?」
有嶋が言ったことは全て事実。
何も言えない私は、黙り込むしかなかった。
「では早速向かいましょうか」
目的地はカラオケ屋。
放課後すぐに家に帰らなくてもいいというこの特別感。
まだ始まってもいないのに楽しくなって、足取りがとても軽かった。