イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
「わかりました、プリンセス」
「プリンセス? あの、私は愛菜だよ。それと、こういうことはやめ……」
そう言いながら距離を取ろうとしたら、いっそう強く抱きしめられてしまう。
「安心してください、これからは愛菜だけにします」
――なにが安心なのかわからないっ。
「えっと……ひとりに絞ればいいとか、そういうことでもなくて」
「うーん、日本語は難しいですね」
困ったと言いたげな顔をしながら、ディオくんは私に顔を寄せてくる。
た、助けて……っ。
言葉と文化の壁にぶつかっていると、腕を力強く引っ張られた。
え……。
鼻をかすめるお揃いのシャンプーの匂い。
気づいたときには、私は剣ちゃんの腕の中にいた。
「おい、そこのペテン師王子。都合の悪いときだけ言葉がわからないふりしてんじゃねぇぞ」
剣ちゃんは私をディオくんの視界に入らないように、深く抱き込む。
こんなときに不謹慎だけど……。
守ってくれる剣ちゃんにドキドキしてしまった。
「あなたは? 愛菜のなんですか?」
私と剣ちゃんを見たディオくんは、真剣な表情で尋ねてくる。
「愛菜は俺の……っ」
剣ちゃんの言葉が勢いを失ってしぼむ。
頬をわずかに赤らめた剣ちゃんは、ぎりっと奥歯を噛むとそっぽを向いてしまった。
「そんなこと、わざわざ話してやる義理はねぇ」
私が彼女だって言うの、恥ずかしかったんだろうな。
なんだか、それが微笑ましい。
剣ちゃん、実は結構な照れ屋だよね。
そんなところも好きだなぁ。
珍しく取り乱している剣ちゃんの顔に癒されていると、ディオくんがふんっと不敵に笑った。
「女性を素直にほめるのはマナーです。大事な女性には特に、愛を囁くべきだと思いますけどね」
「いいんだよ、俺とこいつは……そ、相思相愛なんだっつーの」
えええっ。
あの剣ちゃんが相思相愛って言った!
信じられない……。
絶対に誰かにのろけたりする人じゃないのに。
開いた口がふさがらない私を、剣ちゃんが怒ったように見下ろす。
「なんだよ、その心底驚いたって顔は」
「本当にびっくりしたんだよ! 相思相愛なんて、普段、そんなこと言わないでしょ?」
「それは……あいつにつられた。以上」
出た、剣ちゃんの『以上』。
面倒くさいときと照れてるときは、絶対にこのひと言で話を切り上げようとするんだから。
「もう……でも、うれしかったな。うん、私たちは両想いで相思相愛だもんね」
「……っ、へらへらすんな。あと、調子に乗んな」
「ふふっ、はーい」
笑いながら返事をすれば、剣ちゃんは赤い顔で私の鼻をきゅっとつまんだ。
そんな私たちのやり取りを見ていたディオくんは、眉をハの字にする。
「プリンセス? あの、私は愛菜だよ。それと、こういうことはやめ……」
そう言いながら距離を取ろうとしたら、いっそう強く抱きしめられてしまう。
「安心してください、これからは愛菜だけにします」
――なにが安心なのかわからないっ。
「えっと……ひとりに絞ればいいとか、そういうことでもなくて」
「うーん、日本語は難しいですね」
困ったと言いたげな顔をしながら、ディオくんは私に顔を寄せてくる。
た、助けて……っ。
言葉と文化の壁にぶつかっていると、腕を力強く引っ張られた。
え……。
鼻をかすめるお揃いのシャンプーの匂い。
気づいたときには、私は剣ちゃんの腕の中にいた。
「おい、そこのペテン師王子。都合の悪いときだけ言葉がわからないふりしてんじゃねぇぞ」
剣ちゃんは私をディオくんの視界に入らないように、深く抱き込む。
こんなときに不謹慎だけど……。
守ってくれる剣ちゃんにドキドキしてしまった。
「あなたは? 愛菜のなんですか?」
私と剣ちゃんを見たディオくんは、真剣な表情で尋ねてくる。
「愛菜は俺の……っ」
剣ちゃんの言葉が勢いを失ってしぼむ。
頬をわずかに赤らめた剣ちゃんは、ぎりっと奥歯を噛むとそっぽを向いてしまった。
「そんなこと、わざわざ話してやる義理はねぇ」
私が彼女だって言うの、恥ずかしかったんだろうな。
なんだか、それが微笑ましい。
剣ちゃん、実は結構な照れ屋だよね。
そんなところも好きだなぁ。
珍しく取り乱している剣ちゃんの顔に癒されていると、ディオくんがふんっと不敵に笑った。
「女性を素直にほめるのはマナーです。大事な女性には特に、愛を囁くべきだと思いますけどね」
「いいんだよ、俺とこいつは……そ、相思相愛なんだっつーの」
えええっ。
あの剣ちゃんが相思相愛って言った!
信じられない……。
絶対に誰かにのろけたりする人じゃないのに。
開いた口がふさがらない私を、剣ちゃんが怒ったように見下ろす。
「なんだよ、その心底驚いたって顔は」
「本当にびっくりしたんだよ! 相思相愛なんて、普段、そんなこと言わないでしょ?」
「それは……あいつにつられた。以上」
出た、剣ちゃんの『以上』。
面倒くさいときと照れてるときは、絶対にこのひと言で話を切り上げようとするんだから。
「もう……でも、うれしかったな。うん、私たちは両想いで相思相愛だもんね」
「……っ、へらへらすんな。あと、調子に乗んな」
「ふふっ、はーい」
笑いながら返事をすれば、剣ちゃんは赤い顔で私の鼻をきゅっとつまんだ。
そんな私たちのやり取りを見ていたディオくんは、眉をハの字にする。