明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
私たち華族の家に生まれた女は、良妻賢母を目指すよう教育を受ける。
少しでも地位の高い人との縁談をまとめ、嫁にいくのが生涯で一番大きな仕事なのだ。
そのため、幼き頃から書道、和歌、そして琴を学ばされ、女学校にいる友人は皆、それができてあたり前。
高等女学校の参観日には嫁探しに来る良家の夫人が多数いて、学校も容認している。
そこで見初められ、中退して嫁ぐのがよしとされている。
だから黒木さんが勘違いするのも無理はない。
同級生の中には、もう中退していった者もおり、結婚は私にとっても先の話ではないのだ。
けれど恋というものに憧れがある私は、まだ結婚なんてしたくはない。
一度でいい。
激しく情熱的な恋というもので心を焦がしてみたい。とは思えど、男性と接する機会もあまりないので、現実的ではない望みなのだけど。
「黒木さんは、奥さまは……?」
私こそ奥さまに申し訳ないのでは?と心配になり尋ねる。