明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

「私はひとり身ですから。薩摩藩出身の士族の家柄でして、祖父が維新後、御親兵として上京した折に手柄を立てて男爵を賜りました。それで、早く嫁取りをして跡を継ぐように言われているのですが……」


警察官は士族出身の人が多いと聞いた。

特に薩摩藩。
警視庁の初代大警視の川路(かわじ)氏も薩摩藩士だったような。


「それでは代々警察官でいらっしゃるんですか?」
「いえ。父は会社を興してそれなりに成功しておりますので、実は反対されたんですよ」


会社を継いで欲しかったということだろう。


「それでは他にご兄弟が?」
「妹がいるのですが、事故で歩けなくなってしまいました。ですから期待の跡継ぎなのでしょうけど、私も自由でいたいたちなんです」


制服姿でサーベルを持っていると、とても近寄りがたい雰囲気だが、意外にも話しやすくて驚いた。

しかし、妹さんの事故のことを聞き胸が痛い。


「すみません。余計なことを……」
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