明治禁断身ごもり婚～駆け落ち懐妊秘夜～

「いえ。真田さんは、ご兄弟は？」
「兄がひとりおりますので、私はただ良家に嫁にいけと……。子を産む道具なんです」


そもそも爵位は男系しか継げない。
だから子爵令嬢という肩書を持つ私たちは、よりよき家との強固な縁を結ぶただの道具となる。


「そう、ですか……」


両親の指定した相手との婚姻は幼き頃から覚悟していたことなのに、周囲にちらほら結婚話が持ち上がるようになると、ためらいは隠せない。

しかし、こんなことを家で話そうものなら厳しく叱責されるため、つい溜まっていた不満が口をついて出てしまった。


「あっ、申し訳ありません。こんなことをお話するなんて私……」


慌てて謝罪したが、本当は苦しい胸の内を誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。


「いいんですよ。お気持ち、お察しします。今日のことは伏せておいたほうがよろしいですね。現行犯でしたので、私のほうで真田さんの名前が出ぬように対処しておきます。せめて輿入れまでは羽を伸ばしてください」