明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

そうかもしれない。

薩摩の武士としての血が騒いだ。
そんなところなのかも。

廃刀令で帯刀が禁じられたのち、刀を取り上げられた士族の反乱が多く起こったと聞く。

それは武士としての矜持を打ち砕かれたからだというが、今なおそんな気持ちがあってサーベル片手に悪人と対峙する警察官になったのかもしれない。

私は勝手に思いを馳せた。



黒木さんと出会ってからはや二カ月。

夏の暑い盛りには出かけることも苦痛だったが、九月に入り曇天の日は多少暑さも和らいできた。


女学校に行くだけの生活はなかなか退屈だ。

女学校でも家でも、自室以外では常に指先まで神経を使い、歩き方、ふすまの開け方、食事の食べ方に至るまで気を張り詰めていなければならない。

それが淑女というものだと教育を受けてきたが、笑いたくないときにまで笑顔を強要される生活は、本当は好きではない。

しかし、不自由なく生活ができていて、女学校にも通えるのだから贅沢な悩みだと自分を納得させていた。
< 18 / 284 >

この作品をシェア

pagetop