明治禁断身ごもり婚～駆け落ち懐妊秘夜～

でも、息抜きだって必要だ。
そろそろ銀座に遊びに行きたい。


「かき氷が食べたいな」


今日、女学校の友人が銀座でかき氷を食べた話をしていたからか、ふとそんな気になる。

黒木さんは『和菓子舗に行きたいときは、私がお連れしましょう』と警視庁に来るように言っていたが、さすがに忙しいだろう彼にそんなことは頼めなくて、足を運んだことはない。

かき氷を食べたいと警視庁を訪ねたら、やはり迷惑よね……。

涙を拭ってくれた彼の大きな手を思い出すたびに、なぜか胸の奥が疼き、会いたいという気持ちが湧き起こる。

けれど、実行に移す勇気が私にはなかった。



翌日の九月六日。
女学校に行くと先生たちが妙にソワソワしているのが気になった。


「昨日、日露戦争が日本勝利で終結を迎えました。しかし、日比谷で日露講和条約の内容に抗議する者たちの暴動がありました。警察隊と衝突した模様です。銀座方面にも被害が及んでいますので、決して近づかないように」