明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
佐木さんは満足そうに微笑んだあと玄関に向かい靴を履き始めた。
そして、あとを追った信吾さんに視線を合わせる。
「あっ、ひとつお教えしておきましょう。彼女と出会ったとき、私は娼妓と勘違いしてしまいまして。そうしたら、舌を噛み切って死ぬと啖呵を切られました。あなたのために命をかけて貞操を守ろうとしたんです。複雑な事情があるでしょうが、おそらくおふたりは運命で結ばれている。それでは」
佐木さんはとんでもない発言を残してから出ていった。
あのときのことに言及されるとは思ってもいなかったので、なんとも気まずくて顔を上げられない。
すると、「八重」という優しい声がして、恐る恐る視線を合わせた。
「なにも知らずにすまなかった」
「いえっ……」
黙って逃げたのは私のほうだ。
「もう一度聞く。直正は俺の子なんだろう?」
私を見つめる信吾さんの瞳が真剣で、拍動が勢いを増していく。
もう嘘なんてつけない。