明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

佐木さんは満足そうに微笑んだあと玄関に向かい靴を履き始めた。

そして、あとを追った信吾さんに視線を合わせる。


「あっ、ひとつお教えしておきましょう。彼女と出会ったとき、私は娼妓と勘違いしてしまいまして。そうしたら、舌を噛み切って死ぬと啖呵を切られました。あなたのために命をかけて貞操を守ろうとしたんです。複雑な事情があるでしょうが、おそらくおふたりは運命で結ばれている。それでは」


佐木さんはとんでもない発言を残してから出ていった。

あのときのことに言及されるとは思ってもいなかったので、なんとも気まずくて顔を上げられない。


すると、「八重」という優しい声がして、恐る恐る視線を合わせた。


「なにも知らずにすまなかった」
「いえっ……」


黙って逃げたのは私のほうだ。


「もう一度聞く。直正は俺の子なんだろう?」


私を見つめる信吾さんの瞳が真剣で、拍動が勢いを増していく。
もう嘘なんてつけない。
< 190 / 284 >

この作品をシェア

pagetop