明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
信吾さんの覚悟の大きさを思い知る。
しかし私もそうだった。
子爵家の娘としての何不自由ない生活を捨てたが、まったく後悔はない。
それより、大切な人との子を産み、育めている幸福のほうが何倍も大きい。
そんなことを考えていると、彼に腕を強く引かれて抱き寄せられた。
「どうにもならなかったら、俺はすべてを捨てる。八重と直正だけいればいい。だから八重も覚悟して。俺と一緒に生きていく覚悟を」
覚悟なんていらない。
それが一番幸せなのだから。
「はい」
彼の腕の中でうなずくと、背中に回った手に力がこもった。
でも……。
彼にすべてを捨てさせるなんてことはできない。
一度駆け落ちまでしようとした人だから、おそらく口だけではないだろう。
しかし、警察官としての仕事に誇りを持ち必死に働いている彼に、その仕事まで捨てさせる?
それで後悔しない?