明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
信吾さんも終始笑顔。私もつられて笑ってしまう。
この調子なら、一緒に過ごせなかった時間なんてすぐに埋まる。
そろそろ温かいお茶でも淹れておこうと家の中に入ろうとしたとき、玄関の前に人力車が止まった。
そして立派な紳士が降りてくる。
そのあとにもうひとりの男性が続いた。
「君は誰かね。ここは私の家だが」
最初に降りてきた白髪交じりの髪ではあるがきちんと整えられている男性は、信吾さんのお父さま?
返答に困っていると、すぐに信吾さんが気づいてやってきた。
「父上。どうしてこちらに……」
やはりお父さまだ。
突然の訪問に緊張が走り、うまく息が吸えない。
「雪まるだ溶けちゃう?」
そのとき、直正が無邪気に話しながら信吾さんに駆け寄って、彼のスラックスを引っ張った。
「なんだ、その子は? まさかお前……隠し子がいるのではあるまいな」
「直正を温めてやって」
「はい」
信吾さんはお父さまの訪問に驚いた様子ではあったが、動揺は見えない。
直正を抱き上げて私に渡した。