明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
うしろ髪を引かれる思いではあったけれど、私にはなにもできないと判断し、とりあえず直正を抱いて部屋の中に入った。
しばらく外から声が聞こえていたが、居間に案内したようだ。
私は直正を着替えさせて、温かいお茶を飲ませたあと、汽船の玩具で遊んでいるように言いつけて居間にお茶を運んだ。
「どういうことだ! だから結婚を渋っていたのか!」
部屋に入った瞬間、お父さまの怒号が飛び、ビクッと震える。
「そうです。私には好きな女がいるから結婚はしないと申しましたよね。それが彼女です。先ほどの子は私と彼女との間にできた子です」
「それならなぜ紹介しなかった。正式に娶らなかったのはどうしてだ。まさか、この女には別に夫がいるということはないだろうな」
「彼女はそんなことができる女ではありません」
ふぅ、と小さくため息をついた信吾さんは、私からお茶を受け取り、お父さまとお付きの人の前に出した。