明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「負傷者には警察官もいらっしゃるんですか?」
「警視庁だけでなく、警察署や分署もかなりの数が襲われているようだから、警察官の負傷者も多いらしいぞ」
「亡くなられた方は……」
矢継ぎ早に質問を被せると、眉を上げる父が私をチラリと見る。
「興味があるのか?」
「い、いえっ。大きな騒擾だと新聞で読みましたので、知っておきたいなと思いまして」
まさか黒木さんの安否を知りたいとは言えず、もっともらしい言葉で濁す。
「そこまでは……。私も部下から聞いただけだし」
兄は知る限りのことを話してくれたものの、黒木さんの安否はまったくわからなかった。
日比谷の事件は鎮圧され、多数の逮捕者が出たと新聞の一面に載っていた。
焼かれた警察署の写真も併載されていて、痛々しい限りだ。