明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

「俺の子だ。頼んだぞ」
「そうでしたか! かしこまりました。直正くん、一緒に行こうか」


信吾さんに下ろされた直正は、一瞬不安そうな顔をする。


「章一は俺よりずっと優しいから心配するな」
「お父さまより?」


直正の口からするっと『お父さま』と出てきたからか、信吾さんは頬を緩めている。


「そうだ。小さい頃から一緒にいるが、怒ったところなど見たことがない」


それじゃあこの人が、先ほど言っていた友人なんだ。


「あはは。直正くん、怖くないよ。鯉に餌をやったら、直正くんもおやつ食べる?」
「うん!」


ふたりの説得が功を奏したようで、直正に笑顔が戻り離れていった。

おそらくこれからの修羅場を直正に見せたくなかったのだろう。


「章一は使用人の子で、今も仕えてくれている。幼い頃はよくふたりで悪さをしていた」
「そうでしたか」


信吾さんはふたりのうしろ姿を見つめながら口元を緩める。
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