明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~

信吾さんは直正を抱き上げ、笑顔を見せる。

実父を愛する人に逮捕されるという壮絶な経験はしたが、捕まえてくれたのが彼でよかった気もする。


「待たせたお詫びに、千歳の大福を買ってやろう。でも、しっかり噛んで食べるんだぞ」
「はい!」


こういうときの直正の返事はいつもハキハキしている。

私はほのぼのとした日常を心から楽しんでいた。



章一さんが突然尋ねてきたのは、翌週の土曜日。

大きな強盗事件の指揮を執るために、夜通し出勤していた信吾さんが戻ってきた午前十時すぎのことだった。


「信吾さん、お疲れさまでした。犯人は捕まったのですか?」
「三人逮捕した。とりあえず解決だ」


居間のふたりにお茶を出しに行くと、事件の話をしている。


「今日は急にどうした?」


私は頭を下げて出ていこうとしたが、信吾さんに腕を引かれて止められたので隣に正座した。

章一さんがただ会いたくて訪ねてきたわけではないことを察しているのだろう。

私も先ほどから鼓動が速まりっぱなしだ。
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