明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
章一さんも説得してくれたの?
「章一……」
「私は、皆さまに幸せになっていただきたいのです。とよさんのことがあってから、家の中の明かりが消えたように笑い声も響かなくなりました」
それを聞くと胸が痛い。
「それに先日、とよさんがひと言漏らされました。自分の足が動かなくなったことより、皆が怒りの感情だけに包まれているのがつらい。黒木家がバラバラになるのは望んでいないと」
「とよが?」
章一さんは大きくうなずく。
「私からもひとつ聞いていただきたいことが」
唐突に頭を下げる章一さんに首を傾げる。
「なんだ?」
「実は、とよさんとの結婚を許していただきたく――」
「はっ?」
章一さんの発言を遮り、大きな声をあげたのは信吾さんだ。
隣の私も目を丸くした。