明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
「事故のあと、塞ぎがちだった彼女の話し相手をしているうちに、好きになってしまいました。使用人という立場でこのような感情を持つのは間違っていると気持ちを押し殺してまいりましたが、おふたりを見ていたら抑えられなくなり……とよさんに胸の内をお話しました」
章一さんは必死に訴える。
慮外な展開で、信吾さんは口をあんぐり開けている。
「それで、とよはなんと?」
「はい。自分も同じ気持ちだと」
章一さんの耳が、これ以上はないというほど真っ赤に染まっている。
一方信吾さんは、満面の笑みを浮かべた。
「そうか……」
「旦那さまにもお話しました。大目玉を食らいましたが、とよさんが私とでなければ結婚しないと言い添えてくださいまして」
章一さんは照れくさいのか、目をキョロキョロと動かしている。
「私の給金ではとよさんに不自由をさせるから、このまま実家に住まうのであれば許してくださると」