明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
私はそのとき初めてとよさんとの面会が叶い、艶やかな黒留袖を纏う彼女の前で正座をして深く頭を下げる。
「本当に申し訳ございませんでした」
「八重さん、頭を上げてください。今日は私の晴れの日なんですよ」
「そうですね。改めて謝罪に参ります」
今まで面会を許されなかったので今日になってしまったが、たしかに挙式の日にふさわしい話ではない。
「いえ。もう八重さんからの謝罪はいりません。足が動かなくなったことは残念ですが、その分、章一さんが優しくしてくれますもの。兄にもたくさんわがままを言いましたけど、全部聞いてくれたんですよ。いいこともあるでしょう?」
とよさんは上品な笑みを浮かべたが、なぜかそのあと表情を曇らせる。
「兄には私のために警察官の道を選ばせてしまいました。父の事業を継げばよかったのに、しなくてよかった苦労をかけてしまい申し訳ないと思っています」